第35章 ニート街道まっしぐらな奴ほどニートじゃないって言い張る。
歌舞伎町の大通りに設置されている自動販売機で煙草を買う男がいた。それは勿論この男、土方十四郎。
土方はマヨボロを買い、大江戸病院の方向へと足を向ける。今しがた購入した煙草を一本吸いながら、少し足早に大通りを歩く。
すると、視線の先に同じ真選組の隊服を着た男の姿を見つけた。
土方「ん?」
その人物とは真選組一番隊隊長、沖田総悟だった。
視線を感じた総悟は振り返る。土方と目が合い、思わず声を漏らした。
総悟「げっ。」
土方「おい。なんだよ、『げ』って。」
思わず出てきた総悟の嫌そうな言葉に、土方はムスっとした表情を浮かべる。だが総悟は眉一つ動かさずに反論した。
総悟「そんな事言ってやせんよ。」
土方「今はっきり言葉に出してただろうが。聞こえてんだよ。」
土方の指摘に対し、総悟は尚も否定する。だがその反論内容は土方の指摘した内容とは少し違っていた。
総悟「『げ』じゃありやせん。『げっ。』です。」
土方「大して変わんねーだろ!っつーかむしろそっちの方が響き悪くなってんじゃねーか!!」
頭に血を上らせる土方。だがここで争っても仕方がない。小さく深呼吸し、呼吸を整えてから土方は再び大江戸病院の方へと足を進めた。
その姿を見た総悟は土方に背後から言葉を掛ける。
総悟「まさかとは思いやすが、土方さんも葵咲のお迎え、じゃないですよね?」
土方「えっ!そっ、そりゃあ、お前…。」
『そうです』と言い出しづらくするような言い回しの総悟。土方はしどろもどろになりながらも、次なる言葉を押し出そうとしたが、総悟は更に遮るように口を挟んだ。
総悟「『上司として当然。』、とか何とか言うなら俺が行きますんで必要ありやせんよ。葵咲は一番隊うちの隊士でさァ。俺の部下ですんで。」
土方「っ!!」
言おうとしていた事を先に言われてしまった。土方の性格上、総悟の言葉を肯定する事は出来ず、そのまま歯噛みしてしまった。