第35章 ニート街道まっしぐらな奴ほどニートじゃないって言い張る。
葵咲が大江戸病院へと運ばれてから三週間が経った。
今日は退院日。葵咲は入院着からいつもの私服へと着替え、荷物をまとめる。身支度を整え、ベッドの布団をたたみ、そして椅子に腰掛けて“迎え”が来るのを待っていると病室の扉が静かに開いた。
「やぁ。いよいよ退院だね。」
葵咲の主治医である。
本日で葵咲が退院の為、最後に様子を見に来たのだ。主治医はにこにこして病室へと入る。葵咲は立ち上がり、主治医に向かって深々と頭を下げた。
葵咲「先生、お世話になりました。」
「思ったより長引いてしまったね。」
始めはニコニコしていた主治医だったが、少し申し訳なさそうな表情へと変えて葵咲の傍に歩み寄る。葵咲は首をかしげて主治医に訊いた。
葵咲「? 逆じゃないんですか?」
生死の淵をさまよい、見事生還した葵咲。集中治療室で三日間の昏睡状態を経た身としては、三週間での退院は早いのでは?そう思った。
その事を告げると主治医は首を横に振って訳を話し始めた。
「ああ、そのことなんだけどね…。」