第34章 トラウマを克服するのに必要なのは身近な人の温もり。
葵咲はクローゼットから出て、そのまま飛び出した勢いで土方へと抱きつく。
二人は床に倒れ込んだ。
土方「えぇっ!?ちょ!!」
突然押し倒され、しかも全力の抱擁に焦るのは土方の方だ。
始めはおろおろしてしまった土方だが、なおも震えている葵咲を見てその態度を改めた。
葵咲は震えながら、そして土方の服を掴みながらも何とか声を振り絞った。
葵咲「わ、私…、ダメなんです!狭くて、暗くて、かくれんぼで…雷が揃うと…どうしても…っ!!」
土方「っ!」
放たれる支離滅裂の言葉は、事情を知らない者からすれば意味の分からない語句の羅列だ。
勿論、葵咲の過去のトラウマや事情を知りえない土方だが、目の前で怯える葵咲を見てただ事じゃない事は一目瞭然だった。
土方はそっとその背に腕を回した。
葵咲「!」
土方「心配いらねぇ、俺がいんだろ。」
きつく抱きしめられ、その温もりに葵咲は安心する。
葵咲「…っ。」
土方「・・・・・。」
葵咲は土方の腕の中で落ち着き、そのまま眠りに落ちてしまった。土方は葵咲を抱きしめていた腕を一度離し、ジャケットを脱ぐ。そして葵咲が風邪を引かないようにと気遣い、そのジャケットを葵咲の肩にかけた。
葵咲が安心して眠れるように、土方は葵咲の肩を抱いて壁にもたれかかる形でそのまま眠ることにした。