第34章 トラウマを克服するのに必要なのは身近な人の温もり。
それから小一時間は経っただろうか。院内を隈なく探しているのだが、葵咲はまだ見つかっていなかった。停電が今もなお続いている故、探しづらい事も理由の一つかもしれないが。
土方は院内を駆け回っていた足を止め、ふと窓の外を見た。雨がパラパラと降り出している。
そして土方は立ち込める雲の方に目を向けた。黒雲から雷のゴロゴロする音も聞こえてきていた。
土方「ん?雨か。荒れそうだな…。」
雨が降り出してから数分もしないうちに、雷が落ちた。その頃、かくれんぼ脱落者達は待合室へと集まっていた。
雷の音を聞いた銀時は慌てた様子で窓の外に目を向ける。
銀時「雷!?おい、予定変更だ!俺達もあいつを探すぞ!!」
神楽「どうしたアルカ?」
銀時「あいつが洞窟に閉じ込められた時、激しい雷雨になったんだよ!だから恐らくあいつ…!!」
銀時が最後まで言う前に、その言葉の先に気付いた九兵衛が代わりに言葉を放つ。
九兵衛「暗闇で隠れている時に雷の音なんて聴いてしまえば…昔の嫌な記憶が蘇ってしまう!?」
トラウマを克服する為に行なわれた今回の企画。それが逆に葵咲を追い詰めてしまう事になってしまうのでは。幼い頃の嫌な思い出は早々消えるものではない。それが色濃く蘇るだけでなく、下手をすれば更なる精神的負荷になりかねない。
妙「大変!私達も急いで探しましょう!!」
銀時、神楽、妙、九兵衛、長谷川の五人はその場から立ち上がり、葵咲を探すために方々へと散っていった。