第34章 トラウマを克服するのに必要なのは身近な人の温もり。
一方、エリザベスを追跡していた隊士二人は、結局エリザベスを捕まえることは出来ずに見失ってしまう。二人は肩を落として葵咲の病室へと戻ってきた。
そして今後は益々警戒が必要だということもあり、この事を葵咲に話そうと考えた。
いくら護衛が二人ついているとはいえ、危険な状況である。葵咲にも警戒してもらった方が良いと考えたのだった。
「くそっ、結局逃がしちまったか…。」
「葵咲ちゃーん、入るよー。」
病室の扉を開けた二人は目を疑う。そこに葵咲の姿はなく、ベッドはもぬけの殻になっていたからだ。
「なっ!?葵咲ちゃん!?」
二人は慌てて屯所へと連絡することにした。
勿論のことながら、報告を受け取った屯所内には激震が走る。
二人からの電話を受けたのは山崎だ。病室から葵咲がいなくなったという報告を聞いて、一気に血の気が引いてしまう。そして電話を切って近藤の下へと走った。
山崎「大変です!!局長!副長ォォォ!!」
近藤「どうした、血相変えて…。」
あまりの山崎の慌てぶりに、逆に少し引いてしまう近藤。たまたま近藤の部屋に訪れていた土方も、山崎の形相には驚いてしまった。
そして山崎は近藤の部屋へと入り、呼吸を整えてから言葉を紡ぐ。
山崎「葵咲ちゃんが!葵咲ちゃんが、いなくなりました!!」
土方「なっ!?」
報告を聞いた土方もまた、青ざめてしまう。また高杉が狙ってきたのか?それとも別の攘夷志士が??
どちらにせよ、ただ事ではないのは確かだ。土方は咥えていた煙草を口から零してしまった。
近藤「それは本当か!?ザキ!!」
山崎「はい、桂がいつも連れてる謎の生物が姿を現したそうで、そいつを追いかけている間に…。」
近藤「桂に連れ去られたのか!!」
慌てながらも、山崎の報告をしっかり聞きうけている近藤を尻目に、土方はもう駆け出していた。
土方「近藤さん、俺達も行くぞ!!」
近藤「ああ!!」
三人は屯所内にいる隊士達にも声をかけ、病院へと向かうことにした。