第34章 トラウマを克服するのに必要なのは身近な人の温もり。
葵咲がベッドから腰を上げ、病室のドアに手を掛けるより先にその扉が開いた。
桂「葵咲。」
葵咲「えっ!太郎ちゃん!?」
驚いた葵咲は、右手を口に当てて声を上げる。桂は室内へと入り、扉を閉めた。
葵咲は警備に来ている真選組の隊士達はどうしたのだろうかと心配になり、おろおろする。桂はそんな葵咲を安心させようと、そっと優しく葵咲の肩に手を置き、微笑みかけた。
桂「今からかくれんぼするぞ!」
葵咲「ちょ、急に何言ってんの!?」
真選組が張っている。桂の立場を考えるとそんな事をしている場合ではないことは誰にでも分かる事だ。
葵咲は心配そうに桂の顔を覗きこんだ。
葵咲「太郎ちゃん、危険だよ。」
桂「俺の事なら心配するな。この“逃げの小太郎”、そう易々と捕まりはせん。」
力強く返される言葉に、葵咲は何とも言えない表情を浮かべる。それは、桂の身を心配する以外にも理由があったからだ。
その理由を話すべきかどうか、葵咲は口ごもり、俯いてしまった。
葵咲「でも私は…。」
桂「あの事件がトラウマになっているというのなら、今夜それを塗り替えようではないか。」
葵咲「!」
心のうちを見透かされている。
その事に葵咲はハッとなって顔を上げた。
桂「鬼は真選組。奴らなら必ずお前を見つけ出してくれる。そうだろう?」
葵咲「太郎ちゃん…。」
それから桂は先程銀時達にも話した、かくれんぼのルール説明を行なう。それから、このかくれんぼの参加メンバーも。
そして葵咲はそれを承諾した。
桂「範囲はこの病院内全域だ。俺達か葵咲、どちらが最後まで残るか勝負だぞ。」
葵咲「…うん!」
二人は病室から出て、それぞれの隠れ場所を探しに行った。