第34章 トラウマを克服するのに必要なのは身近な人の温もり。
誰もが寝静まる院内は物音一つなく静寂に包まれていた。
葵咲の病室の前には、今朝土方達が予告に来たとおり、警備のために真選組隊士が二人立っている。その二人の隊士達のいる場所から遠からず近からずの距離にエリザベスは佇んでいた。
エリザベスは廊下の曲がり角からひょっこり覗き込む形で隊士達を凝視している。
その視線を隊士達は感じ取った。
「ん?あいつは…確か桂といつも一緒にいる奴!!」
「葵咲ちゃんを狙って来やがったか!!」
エリザベスが普段から桂と行動を共にしている事は真選組も知っている。
エリザベスの姿を見つけた隊士達は、エリザベスに向かって走り出した。
「逃すな!追えェェェェェ!!」
作戦決行だ。エリザベスは、すぐ近くに隠れて待機している桂に向かってプラカードを見せた。
エリザベス 『今のうちに』
桂は静かに頷き、警備の外れた葵咲の部屋へと足を向けた。
その頃葵咲は、まだ眠る事が出来ずに本を読んでいた。だが、ドタバタしている様子に気付き、その視線を病室のドアの方へと向けていた。
葵咲「やけに騒がしいなぁ。」
外の様子を窺おうと、ベッドから立ち上がろうとしたその時、フッと室内の電気が消えた。
葵咲「え?停電!?何かあったのかな…。」
これは銀時達の仕業。少しでもかくれんぼで見つかりにくくする為に仕組んだ事だ。
エリザベスと桂が葵咲のもとへと来ている間に、他のメンバー達が配電盤のある部屋へと訪れ、ブレーカーを壊したのだ。暫く電気はつかないだろう。
だが、これが銀時達の仕業である事をしらない葵咲は不安になる。葵咲はベッドに腰掛けてスリッパを履いた。