第4章 自分のドッペルゲンガーじゃなければ多分死なない。
近藤が志村家を出て数分後のこと、土方は真選組屯所にて真選組の一番地味な男こと、山崎退に近藤の居場所を尋ねていた。
土方「おい山崎、近藤さん見なかったか?」
山崎「さぁ。朝から見かけてませんよ。」
山崎の返答は土方の想定内。そしてすぐさま近藤の行き先に予測がついた。
土方「…ったく。またあの女のところか。」
土方はため息をつきながら、煙草を一本咥え、火を点けた。ちょうどその時、屯所の入口の方から土方の名を叫ぶ声と、屯所中に響き渡る程の物凄い足音が聞こえてきた。近藤は土方のいる部屋の襖を勢いよく開いた。
近藤「ト、ト、ト、トシィィィ!!大変だァァァァァ!!!!!」
土方「ど、どうしたんだよ、近藤さん…。」
あまりの近藤の慌てぶりに土方もただ事じゃないと心配する。
近藤「俺見ちまったんだよ!ドッペルゲンガーだ!ミツバ殿のドッペルゲンガー見たんだよ!!」
その発言を聞いた瞬間、土方はピンときた。その人物に心当たりがあったのだ。きっとあの女だ。自らを護り屋と名乗る、人の話を聞かない天然迷惑女。
近藤「やべぇよ、俺死んじまうのかなァ!?まだ死にたくねぇよォォォ!!」
土方「落ち着け近藤さん、その女ってのは…。」
土方が女の特徴を確認しようとしたその時、部屋のすぐ近くの縁側の方から食器が床に落ちて割れる音が聞こえた。土方は音のした方の障子を開けて縁側の様子を見る。縁側の床には落ちた衝撃で二つに割れてしまった湯呑があり、その先には屯所の玄関の方へと走っていく総悟の後ろ姿があった。土方の後ろから覗き込んだ近藤は総悟の後ろ姿を見て叫んだ。
近藤「あっ!総悟ォォォォォ!!」
どうせ総悟の行き先も近藤が行っていた場所の予測から恒道館道場だろう。そう思った土方はすぐに総悟の後は追わず、念の為に沖田ミツバ似の女について髪型やら髪色等を確認し、その後総悟を追う事にした。