第33章 長年染み付いた癖はなかなか直らない。
理由を聞いて、なるほどと納得する新八。それは兄弟姉妹の間等でもあり得る嫉妬の類だ。
上の子は、下の子が可愛がられているように感じるし、下の子は、上からのお下がりの服を着せられる事等で上が贔屓されているように思う。どちらかが特別扱いを受けていると感じれば、その相手が羨ましく思え、時には疎ましく思えたりもするものだ。
しかも、赤の他人である学び舎の生徒とあれば、なおの事だろう。自分は血のつながりのない赤の他人で、相手が血の繋がった親族ならば、その想いが募っても仕方がない。
桂「そう。今思えばただのくだらない嫉妬だ。だが、それは日に日にエスカレートし、イジメへと発展してしまった。葵咲の事を無視したり、仲間外れにする者が増えていたんだ。」
新八「そうだったんですか…。」
話を聞いた六人はしんみりとしてしまう。しかもいじめの原因が本人の招いた事ではなく、不可抗力な事由なだけに、何も言う事が出来なくなっていた。
そして桂は更に続ける。
桂「その中でも葵咲のトラウマになっているのが、“かくれんぼ”。葵咲をいじめていた連中は、あいつをかくれんぼに誘い、そのまま見つけ出さないどころか葵咲が隠れていた洞窟の入口を封じ、閉じ込めて放って帰ってしまったんだ。」
妙「酷い…。」
長谷川「…そいつはえげつねぇな…。」
九兵衛「それでトラウマになってしまったというわけか。」
語られるいじめの内容に、一同は眉根を寄せる。幼い子どもが起こしたいじめにしては規模が大きい。最初はしんみりしてしまった六人だが、神楽は怒りを露にして叫んだ。
神楽「そいつら見つけ出してぶっ飛ばしてやるアルヨ!」
銀時「いや、そいつらの消息分かんねーし。」
冷静にツッコみ、神楽を宥める銀時。桂はそんな二人には構わずに続ける。
桂「そんな幼い頃のトラウマが、あいつにはまだきっと根付いているのだろう。だからそれを俺達で取り除いてやる為に、今夜葵咲を含めた俺達八人でかくれんぼをしたい。」
桂の提案に、銀時はふっと笑みを零す。
そして近くにあったベンチに腰掛け、足を組みながら桂を称賛した。