第33章 長年染み付いた癖はなかなか直らない。
ようやく話を聞く気になり、蹴っていた足を止める三人。桂は服についた土埃を払いながら立ち上がる。
そして腕組みをし、難しい顔を浮かべた。
桂「あいつはいつも真選組で自分に負荷が掛かるほど仕事を抱え込んでいたらしい。」
銀時「!」
その事は銀時達も承知の事実だった。真選組に女中として入って間もなくの事、産業医(仮)として話を聞いたことがあったからだ。
六人は、静かに桂の言葉に耳を傾ける。
桂「だから、たまにはハメを外して遊ばせてやりたい。」
新八「だからって何でかくれんぼなんですか?」
今まで苦労が多かった、仕事に励んでいた苦労を労ってやりたい。その意見は納得出来る。だが何故かくれんぼなのか。
疑問に駆られた新八は、その疑問をそのまま桂にぶつけたのだ。その疑問に対して桂は眉根を寄せて銀時の方へと目を向けた。
桂「…銀時、お前は気付いただろう。かくれんぼが未だあいつのトラウマになっていることに。」
銀時「! ・・・・・。」
新八「かくれんぼがトラウマって?」
その“トラウマ”について、銀時と桂は何か知っている様子だった。二人はその事情について、言うべきかどうかを躊躇うように目を合わせたが、銀時が頷き、桂が口火を切る。
桂「昔、俺達が幼き頃の話だ。葵咲も俺達と同じ松陽先生の学び舎にて過ごしたのだが、最初は葵咲の事を良く思わない連中が多くてな。」
新八「え?葵咲さんが嫌われてたって言うんですか?むしろ皆から好かれそうな気がしますけど…。」
新八は驚きで目を瞬かせる。人当たりが良く、いつもにこにこしている葵咲。他人の事を一番に考え、自己を犠牲にする事もしばしば。そんな彼女が嫌われる要素など見つからなかった為だ。
桂はその理由を静かに話し始める。
桂「葵咲は松陽先生の姪っ子。その事で先生に特別扱いされているのではと、そう勘違いする連中がいたんだ。」
銀時「くだらねぇガキの嫉妬だよ。」