第33章 長年染み付いた癖はなかなか直らない。
病室の入口へと足を向ける土方。扉に手をかけ、出て行こうとする土方を葵咲は呼び止めた。
葵咲「・・・・あ、あの!土方さん!」
土方「ん?」
土方はその手を止め、振り返る。
葵咲「あの…まだ、伝えきれてない事、あって…。それだけじゃ…なくて…。私…あの、えっと・・・・。」
土方「?」
ドクン、ドクン…葵咲の鼓動は大きく、そして早くなる。その言葉の先にある“事実”を口にして良いのか、少し迷いがあったからだ。
だが、意を決して言葉を紡ごうとした、その時。窓の外でズルっという音が聞こえた。
桂「ちょ、もう限界…!!(小声)」
葵咲「あっ…。(小声)」
桂の存在をすっかり忘れていた。葵咲が窓の外にチラリと目をやると、桂は片手の指先だけで何とか窓枠に掴まっている状態だ。本当に限界である。
土方「どうした?」
土方は怪訝な顔をして葵咲の傍へと近寄ろうとする。葵咲は慌てて両手を振って答えた。
葵咲「あ、えっと、何…だったかな。ごめんなさい、忘れちゃった!」
土方「何だソレ。」
葵咲の方へと歩を進めていた土方だったが、その足を止めて眉根を寄せる。だが、少し心配そうな表情に変えて言った。