第33章 長年染み付いた癖はなかなか直らない。
土方「じゃあ俺の目ェ見てもういっぺん言ってみろ。」
葵咲「っ。えっと・・・・・。」
一度は顔を上げる葵咲だったが、心のうちを見透かされるその台詞に何も答えられなくなった。きゅっと口を噤んで再び下を向く。そんな葵咲の様子を見ながらも、土方は淡々とした口調で続けた。
土方「…お前は嘘が下手だからな。嘘ついてる時ゃ目が合わねぇ。」
葵咲「!」
土方「ま、これは近藤さんの受け売りだがな。」
葵咲「・・・・・。」
流石は、というべきなのか。いつもはストーカー行為を働いているバカなゴリラも、まがりなりにも真選組局長なのだ。局長として部下達の事をしっかりと見ているのだろう。改めて近藤勲という男の器の大きさを実感した。
葵咲は静かに顔を上げ、土方に視線を合わせる。土方は葵咲をじっと見つめたまま静かに続けた。
土方「風呂に最後に入ってたのもそれが理由か?」
葵咲「あの…その・・・・。」
思わずまた目を逸らしてしまう葵咲。自分の癖を言い当てられた後でも、それは簡単に直るものではない。癖とはそういうものだ。
だがそんな自分の癖を変に意識してしまい、何も言う事が出来なくなってしまうのだった。
土方「…全部一人で抱え込んでたんだな…。」
葵咲「・・・・・。」
俯き、掛け布団の上に視線を落とす葵咲。土方はそんな葵咲の頭に優しく触れた。
土方「んな事、気にする必要ねぇから。もう自分に負担かけるような真似するな。」
そっと髪を撫でられ、葵咲は再び面を上げる。
土方は髪に触れていた手で、今度はそのまま葵咲の頬に触れる。
土方「これからはなるべく、…出来るだけで構わねぇから、俺達に…いや、俺に相談してくれ。もう一人で抱え込むな。」
葵咲「土方さん…。」
病室にまた少し沈黙が落ちる。二人は静かな病室で見つめあう形になった。
しばしの間そうしていた二人だったが、やがて土方が視線を逸らし、静かに立ち上がった。
土方「…じゃあ俺ァ仕事に戻るわ。」