第32章 前に進む為には、まずは一歩から確実に。
一方その頃、病院を後にした近藤と土方は、ゆっくり歩きながら会話を交わしていた。
土方「そういや、総悟の奴はどうした?てっきり先に見舞いに行ってんだと思ってたが。」
近藤「アイツは一度も見舞いには行っとらんよ。『気乗りしねぇ』ってな。」
『気乗りしない』、その言葉に隠された総悟の心情にピンときた土方は、加えていた煙草を離し、ため息とともに深く煙を吐き出す。
土方「…葵咲が入院する姿は姉貴と重なっちまうからって事か。…ったく、アホかあいつは。ついこの間、姉貴と重ねねぇっつってたのは何処のどいつだよ。葵咲(あいつ)は、葵咲(あいつ)だろーが。」
近藤「!」
土方「他の誰でもねぇだろ。」
近藤「フッ。そうだな。」
始めは誰もが重ねていた葵咲とミツバ。だが、きっぱりと葵咲を一人の女性、“市村葵咲”として見ている土方に、近藤は何か温かいものを感じた。そしてその言葉を聞いて近藤は自らの意見を述べる。
近藤「確かにお前の言うとおり、葵咲は葵咲だ。だが、俺は総悟はもうそんなガキじゃねぇと思ってる。」
土方「?」