第32章 前に進む為には、まずは一歩から確実に。
二人の言葉を聞き、葵咲も思い出したように人差し指を立てる。
葵咲「あ、そういえばさっきニュース見た!爆破テロ?」
近藤「ああ。大江戸スカイツリーの時と同じく、主犯格は暁党の“爆弾魔”で間違いない。」
土方「奴らも手段は選ばねぇ連中だ。こんなところで真選組隊士が療養中なんて事が知られれば利用されかねねぇ。」
それは勿論葵咲の事。女ということ、しかも吉田松陽の姪っ子ということで、ただでさえ狙われやすい性質であるのに、それに加えて療養中とあっては、狙われる可能性山の如しである。
土方の見解には納得がいくが、ここで一つ浮かび上がった疑問を新八が口にした。
新八「まさか、無理矢理退院させるって言うんですか?葵咲さんの怪我は全治三週間ですよ?まだ…。」
いくら見た目ピンピンしているとはいっても、医者の診立てでは全治三週間。まだ一週間も経っていない。それを今退院させるというのはあまりにも酷な話なのではないか。新八の抗議の声を、近藤が慌てて制する。
近藤「勿論そんな事はせん。ここの警備体制を整えるんだ。」
新八「!」
土方「今晩から隊士達に交代でここを張らせる。何があっても、すぐに対応出来るようにな。」
とは言っても、葵咲は女性だ。室内に四六時中待機させるわけにはいかないので、隊士達が警備するのは病室の入口だそうだ。
だからといって、隊士が入口に構えていたら逆に怪しまれるのではないか?そんな疑問が浮かんだ新八だったが、それよりも早く銀時が口を開いた。
銀時「…まるでこいつを見張るみてぇだな。」
近藤「・・・・・。」
含みのある銀時の言葉に、近藤は何とも言えないといった表情で、ただ押し黙る。そんな近藤に代わって土方が言葉を紡いだ。
土方「高杉のヤローが仕留め損ねた葵咲(コイツ)をまた狙って来る危険だってある。警備強化すんのは当然だろ。」
銀時「・・・・・。」
その見解には、銀時も反論は出来なかった。