第32章 前に進む為には、まずは一歩から確実に。
土方「おい、入るぞー。」
この声は間違いなく真選組 鬼の副長こと、土方十四郎である。
室内にいる誰もが焦ったように桂に目を向けた。
「!?」
銀時「おい!ヅラ隠せ!!ヅラ隠せ!!」
銀時の言葉を聞いた神楽が、桂を足蹴にして窓の外へと追いやった。
桂「げふっ!」
外に出された桂は、窓枠に指をかけて必死につかまる。銀時が窓の外に目を向けて小声で話しかけた。
銀時「捕まりたくなかったらそこで大人しくしてろ。」
桂「ちょ、これ、捕まる前に落ちて死ぬ…!!」
葵咲の病室は七階。当然、落ちたらただではすまない。しかもこの日桂は、いつもの脱出用パラシュートを装備していなかった。必死になるのも無理はない。
だが、もう室内に戻って何処かに隠れる時間などなく、戻れば即座に逮捕されるだろう。仕方なく必死に耐え忍ぶ桂なのであった。
病室の扉が開き、姿を現したのは近藤と土方。二人が一緒に見舞いにくるのは珍しい。普段から仲の良い近藤と土方だが、隊士達の指揮をするという立場でもある為、葵咲が目覚めた後は今まで一緒に見舞いに訪れたことはなかったのだった。
病室に入り、近藤は室内にいる面々に目を向ける。
近藤「なんだ、お前達も来ていたのか。」
葵咲「そっ、そうなの!今日は五人と仲睦まじく団欒する日だから!」
土方「五人と?」
即座に反応する土方。銀時、新八、神楽、長谷川。室内にはどう見ても四人しかいない。桂の事で思わずボロを出しそうになる葵咲に、銀時は心の中でツッコんで冷や汗を垂らす。
(銀時:わーっ!バカヤロォォォ!!)
近藤「“五人で”、の間違いだろう。葵咲は相変わらずだな。」
思わぬ方向からの助け舟でほっとする銀時達。