第32章 前に進む為には、まずは一歩から確実に。
二人がそんな会話のやりとりをしていると、そこに新八が割って入った。
新八「銀さん、出掛けるってここだったんですか。それならそうと言ってくれれば…。」
この日、銀時は万事屋を出る際に、『葵咲の見舞いに行く』とは言っていなかった。いつもは万事屋から葵咲の見舞いに訪れる際は、その事を告げていた銀時だ。その為、新八はてっきり別の用事だと思い込んでいたのだった。
銀時「あぁ、悪ィな。こいつと待ち合わせてたからよ。」
そう言って銀時は親指でくいっと桂を指差す。紹介されて桂が新八と神楽に目を向けた。
桂「うむ。久しぶりだな、リーダー、新八君。」
新八「桂さん、お久しぶりです。」
神楽「ヅラァ!お前も来てたアルか!」
桂「ヅラじゃない、桂だ。」
いつもの桂の返しが入り、病室内は和やかな雰囲気になる。
葵咲は自分の為にわざわざ足を運んでくれた新八達に感謝の意を言葉にした。
葵咲「来てくれてありがとね。神楽ちゃん、めが…いや、えっと…し、新八君…。」
新八「ちょっと、今また僕の事めがねさんって言いそうになりませんでした?」
鋭い新八のツッコミを葵咲は華麗にスルーし、マダオの方に目を向ける。
葵咲「それから…長谷川さん?でしたっけ?」
長谷川「よく覚えてたな。」
今日、長谷川がここに来たのはただの偶然だ。銀時が出掛けてしまい、万事屋に残された二人はとくに仕事もなかった為、葵咲の見舞いに向かうことにした。その道中でたまたま長谷川に遭遇し、ここに来ることを話したのだ。
話を聞いた長谷川は、以前縁日で葵咲と出会った事、その時お好み焼きを振る舞いそびれた事を思い出し、一緒に病院へと足を向ける事にしたのだった。