第32章 前に進む為には、まずは一歩から確実に。
場面は病院へと戻る。
桂「しかし、またこうして三人で話せる日が来るとはな。」
幼き日々を思い出すように、遠くに目をやりながら話す桂。銀時と桂は攘夷戦争時代の戦友でもあるが、葵咲は違う。松陽の学び屋で共に過ごした者達の多くは、今やそのほとんど交流はない。そんな者達の中の一人である葵咲ともこうして話す事が出来ているのは奇跡に等しいとも思えたのだった。
そしてその意見には銀時も同意する。
銀時「そうだな。かくれんぼでもするか?」
葵咲「…“かくれんぼ”は…もう、こりごりだよ。」
銀時「! ・・・・悪ィ。」
少し目を伏せて寂しそうな顔を浮かべる葵咲。何やら嫌な過去まで思い起こさせてしまったようである。銀時は悪気なく言ったのだが、考えなしに放ってしまった言葉を後悔した。少し場の空気が落ち込み、沈黙も落ちる。
だがそこで葵咲が真剣な表情で話を切り出した。
葵咲「あのさ、ちょっといいかな?大事な話…。二人にちょっと意見を聞きたいことがあって…。」
桂「どうした?改まって。」
話を切り出したものの、葵咲は少しためらうように俯く。
だが、意を決したように布団をきゅっと握って話し出そうとしたその時、病室の扉が開いた。
新八「失礼します、こんにちは!」
神楽「キサキサ!元気してるアルか?」
病室に入ってきたのは新八、神楽、そしてマダオこと長谷川の三人だった。
新八と神楽の二人も葵咲の身体を心配し、時折見舞いに来ている。その事に関しては銀時も承知の事だったのだが、銀時は神楽の葵咲の呼び方に対して反応を示した。
銀時「何?キサキサって。いつからそんな呼び方になったの。」
神楽「キサキサは皆のアイドルアル!」
銀時「ミサミサみたいに言ってんじゃねーよ。」
“ミサミサ”とは勿論、デスノートの弥海砂(あまねミサ)の事である。“キサ”と“ミサ”、なんとなく似ているので適当にあだ名をつけた神楽なのだった。