第31章 旧友に忘れられて自分だけ覚えているのは何か悔しい
数分後、なんとか新八と神楽の誤解も解け、四人はソファに座って対面する。
新八「なんだ、それならそうと早く言って下さいよ。」
銀時「お前らが話聞く前にフルボッコにしたんだろーが!」
そう言う銀時の顔はボコボコである。ボコボコに殴られたところで、少し落ち着いた葵咲が止めに入ったのだ。
流石の葵咲も、それには申し訳なさそうに銀時の顔を横目でちらりと見やった。葵咲の視線に気付いた銀時は首を横に向けて葵咲の顔を窺う。
銀時「で?ちょっとは落ち着いたか?」
葵咲「うん、有難う。久しぶりの再会なのに変なことに巻き込んじゃってごめんね。」
銀時「久しぶりってお前、こないだ会ったばっかだろうが。」
葵咲「・・・・・。」
二人が接したのはつい先日の事。大江戸スカイツリーでの事件からは数週間程度しか経っていないのだ。数週間で『久しぶり』というのは少し違和感がある。
葵咲はすぐさま自分の言葉を訂正した。
葵咲「…大江戸スカイツリー以来の久しぶりの再会なのに…。」
銀時「取ってつけたように言ってんじゃねーよ。さっきのは明らかにガキの頃からの計算だったろうが。」
葵咲は銀時と大江戸スカイツリーで会っていた事…いや、それどころか万事屋に世話になって真選組で働く事になった事などなど、大人になってから銀時と接した全ての出来事をデリートしてしまっていたのだった。
葵咲「とにかく、悪いとは思ってるから。」
銀時「何に対して?」
銀時からのその質問に葵咲は答えることなく、ソファから静かに立ち上がった。
葵咲「私、そろそろ行くね。銀ちゃんと話出来て良かった。」
笑顔で語られた台詞だったが、嫌な予感のした銀時はすぐさま立ち上がり、葵咲の腕を掴む。