第31章 旧友に忘れられて自分だけ覚えているのは何か悔しい
今度は銀時が顔を真っ赤にして反論した。どうやら身に覚えはあるらしい。
だが、葵咲はそんな銀時をからかうのではなく、少し寂しげな表情をして目線を下に向けた。
葵咲「その時は私、皆に嫌われてたしさ。自分から声掛けるなんて恐れ多くて…。銀ちゃん人気者だったしね。ハハハ…。」
銀時「・・・・・。」
過去の思い出を笑い話のように話そうとする葵咲だが、無理が見て取れた。
葵咲「いつも影から見守ってくれてたんだよね。今も変わってないんだね、有難う。」
銀時「お前・・・・。」
その無理した笑顔が逆に銀時の胸をきゅっと締め付ける。銀時はかける言葉が見つからずに言葉に詰まらせていると、葵咲の目から一筋の涙が零れ落ちた。
銀時「!」
葵咲「…あれ。ごめ、なんでだろ。泣くつもりなんてなかったのにな…。なんか安心したら、急に涙が・・・・。」
両手で口と鼻を覆う葵咲。その姿を見かねた銀時は葵咲の腕をぐいっと引っ張り、自分の胸の中へと抱きすくめた。
葵咲「ちょ、銀ちゃん!?」
銀時「お前だって変わってねぇじゃねーか。そうやって人に涙隠そうとするところ。」
葵咲「!」
銀時「誰も咎めやしねぇよ。辛い時は無理して笑ってねぇで、思いっきり泣きゃあいい。」
銀時の温かい言葉に、葵咲の涙は堰を切ったようにポロポロと溢れ出した。
葵咲「銀ちゃ・・・・ふっ…うわーーーーーん!!」
銀時「暫くこうしててやっから。」
そうして葵咲は銀時の腕の中で涙を流した。銀時は何も言わずに、ただただ葵咲を静かに抱きしめていた。