第31章 旧友に忘れられて自分だけ覚えているのは何か悔しい
少し場の空気が和んだところで話を続けようとした銀時だったが、それよりも先に葵咲が言葉を続けた。
葵咲「名前変えたの?」
銀時「は?」
意味が分からない。そういった表情で銀時は片眉を上げる。
葵咲「だって、坂田銀時だったじゃん!」
銀時「…いや、今も坂田銀時なんだけど。」
何言い出すんだ、コイツは。そんな呆れた眼差しで葵咲を見つめる。
だが、葵咲は至って真剣に銀時に向き合った。
葵咲「何言ってんの。今は 『万事屋 銀』 なんでしょ?」
銀時「・・・・・。」
一瞬時が止まる。場の空気が固まった。
そして少しの間を置き、銀時が叫んだ。
銀時「えぇぇえぇぇぇぇぇ!?何、お前もしかして今の今まで俺の名前、『万事屋 銀』だと思ってたわけェェェ!?それで気付いてなかったわけ!?どんな名前だよ!!オメー天然もそこまでいくと国宝もんだぞ!!」
なるほど、それで葵咲はいつも俺の事を『万事屋さん』と呼んでいたわけか。名字だと思ってたが故の名字に“さん”付けか。納得。
…と、納得している場合ではない。銀時は心の中で一人ノリツッコミを繰り広げてしまう。
葵咲「て、天然じゃないでしょ!!そういう名前の人だっているかもじゃん!!」
急に恥ずかしくなった葵咲は、顔を真っ赤にして抗議する。だが、銀時は引き下がらない。
銀時「それにしたって面影やら何やらで気付くだろフツー!!名前に“銀”ついてるしよ!!」
葵咲「あ…。い、いや~なんとなくね、最近はそうじゃないかなぁ~と思ってたんだよ、ホント、ホント。ははっ。」
最初は反論していた葵咲だったが銀時の鋭いツッコミに言い逃れが出来ないと思い、今度は適当に話を合わせようとする。視線を下に逸らして頭を掻く葵咲を見て、銀時は更にツッコんだ。