第31章 旧友に忘れられて自分だけ覚えているのは何か悔しい
葵咲は桂に合わせて表情を改める。そして袖の下からさっと飴玉を出したのだった。出てきたのはパイン飴である。なんでそんなところからパイン飴!?そんな疑問を抱えた銀時はすかさずツッコんだのだった。
銀時のツッコミを軽く交わし、なおも桂とケラケラ笑う葵咲。
そんな葵咲の様子を見て銀時は頬を膨らませ、ムスッとした表情で葵咲に抗議した。
銀時「っつーかオイ。なんでヅラには気付いてて俺には全然気付いてなかったわけ?酷くね?」
どうやら銀時と葵咲も幼馴染であった様子。まぁ当然といえば当然だろう。銀時、桂、高杉は松陽の寺子屋で育った幼馴染。葵咲が桂と高杉と幼馴染であるのなら、当然、銀時とも幼馴染という事になる。
不機嫌になる銀時に対して、葵咲は眉を八の字にして口を尖らせた。
葵咲「えー。だって『万事屋 銀』とか名乗るからさぁ。」
銀時「名乗ってねーよ!いや、確かに『坂田銀時です。』とも言ってねーけど!!でもそれにしても遅すぎじゃね!?最初再会してからどれだけ経ったと思ってんだよ!結局俺の方からカミングアウトしたしィィィ!!」
こちらは先程と逆のパターンのようだ。銀時は葵咲に気付いていたが、葵咲は銀時に気付いていなかったのだ。
銀時が葵咲に声を掛けなかったのは、先程と同じ理屈である。
だが、そのもどかしさに耐え切れなくなった銀時は、結局自分から名乗りを上げたようだ。抱えていた思いをぶちまける銀時。怒鳴った後は、腕を組んでフイっと背中を向けてしまった。
葵咲「拗ねてる?」
銀時「べっつにぃー!!拗ねてなんかねぇしィィィ!!」
明らかに拗ねている。
子どものような銀時の態度に葵咲は一つため息を漏らす。そして幼子をあやすかのように一つ提案した。
葵咲「ごめんってば。お詫びに退院したらケーキ作ったげるから。」
銀時「今の言葉忘れんなよ!?絶対作れよ!?約束したからなァァァ!約束破ったら針千本飲ますからなァァァァァ!!」
葵咲「はいはい、分かりました。」