第30章 人間大事なのは肩書きじゃなくて、中身。
葵咲「!・・・・沖田…さん・・・。」
総悟「・・・・・。」
葵咲は急いで涙をゴシゴシとぬぐった。
だが、総悟と目を合わせられない。合わせる顔がない。姉の代わりになると大きな口を叩いておきながら、その気持ちを裏切った。ミツバの顔に泥を塗ったようなものだ。
葵咲は黙って布団の上に視線を落とした。
総悟「…アンタは姉代わり失格でぃ。」
葵咲「・・・・はい。」
総悟の言葉を親身に受け取る。
総悟「もう俺ァ葵咲姉ぇなんて呼ばねぇ。これからは…葵咲って呼ぶ。だから、アンタも…俺を弟みたいに見るんじゃなくて、同じ真選組の仲間として見て欲しい。そして、一人の男として。」
葵咲「沖田さん…。」
想像していなかった言葉に、葵咲は思わず顔を上げる。そんなやり取りを見ていた銀時達万事屋の三人はフッと笑みを零した。
葵咲「みんな…有難う。…ごめんなさい。本当に…ごめんなさい。私、皆にまだ嘘ついてる事がある。」
土方「?」
語られようとする真実。だが、例えそれがどんな事であっても、もう誰も動じないだろう。それ程、葵咲と真選組との絆は深まっていた。
葵咲「ここにいる資格がないなんて、ただの建前…。本当は…、ホントはただ、拒絶されるのが怖かっただけ…。」
土方「!」
振り絞るように語られる葵咲の想い。葵咲は語りながら、その心の痛みに耐え切れずにまた、涙を零した。
葵咲「私の生い立ち知って、皆の視線が変わるのが、皆の目が冷たくなるのが怖かった。お前なんかいらないって…そう言われるのが怖かった。また、独りになるのが怖かった…。だから、だから…知られる前に、自分から逃げだしたの・・・・。」
近藤「葵咲…。」
銀時「・・・・・。」
そこにいる誰もが静かに葵咲の想いを聞いていた。
だが一人、この語らいに口を挟む男がいた。
土方「けっ、くだらねぇ。」
葵咲「そうだよね、くだらない、よね。」