第30章 人間大事なのは肩書きじゃなくて、中身。
話を聞いた葵咲は、きゅっと唇をかみ締める。
そして掛け布団を握り締めながら、下を向いて静かに言った。
葵咲「…皆さんには本当にご迷惑お掛けしました。退院したら、処罰は甘んじて受ける所存です。辞表も書きます。私は、私には…、真選組にいる資格はありません。」
そんな葵咲の様子を見て、近藤は呆れたようにため息を漏らした。
近藤「何言ってるんだ。完治したらまた宜しく頼むぞ。」
葵咲「…え?でも私は…。」
土方「今抱えてる仕事、放り出すつもりか?」
病室の入口にもたれながら口を挟む土方。先程煙草を吸いに出て行ったはずでは?その疑問を山崎がぶつける。
山崎「あれ、副長。煙草は?」
土方「ライター忘れた。」
言い訳のように言葉を残して、土方は室内へと入る。
葵咲「放り出すとかそんな問題じゃ…。私には…ここにいる資格なんて…。」
近藤「生い立ちなんて関係ねぇ。お前は命張って真選組を護ろうとした。立派な真選組隊士だ。」
土方「ま、そういう事だ。」
二人の言葉を聞き、葵咲の瞳から一筋の涙が零れ落ちる。
近藤「お、おい、葵咲!?」
女の涙に弱い近藤。いや、不慣れと言うべきか。近藤は葵咲の涙の理由が分からずに狼狽してしまう。
葵咲「…私・・・私・・・・・ここに居ても、いいの?」
近藤「フッ。当たり前だろう。」
山崎「俺達、仲間じゃないか!」
笑顔で返す二人に、葵咲の涙は止まらない。大粒の涙が堰を切ったようにポロポロと流れ落ちた。
土方「…おい、そろそろ出て来いよ。お前はどう思うんだ?」
病室の外に向かって声を掛ける土方。どうやらライターを取りに戻ったというのは口実で、先程病室から出た際に、とある人物に出くわし、その人物を面会させる為に戻ってきたようだ。外にいた人物は声を掛けられ、病室へと顔を出す。