第30章 人間大事なのは肩書きじゃなくて、中身。
葵咲「だから・・・・謝ったり…したら、ダメ。」
総悟「え・・・・?」
葵咲「貴方が…攻撃、して、くれた…から、高杉に…少し、隙が出来た…から・・・・高杉を…斬れた。貴方の…お陰、だから・・・・。悔やまない…で。自分で…選んだ、道・・・・貴方が、選ん…だ、選択肢は…間違ってなんか…なかっ…た、から・・・・謝ら…ないで…。振り返っちゃ…ダメ、だから…ね。」
総悟「・・・・っ!!!」
実の姉、ミツバが最期に残した言葉と同じだ。
断片的ではあるが、ミツバと同じ台詞を残そうとする葵咲にミツバの最期が重なる。
総悟の瞳から一筋の涙が零れ落ちた。
銀時「くそっ!!血が止まらねぇ!!」
銀時は必死で止血しようとするが、思うように上手くいかない。流れ出る血は銀時の白い着物を赤く染めてゆく。
そんな様子を土方は視界に入れないようにしていた。見てしまえば、言葉が揺らいでしまいそうな気がしたからだ。
土方「もうすぐ!もうすぐ救急車が来る!だからもう喋るな!絶対、絶対に助かる!!」
現実から目を背けて葵咲に必死に呼びかける。そんな土方の様子を見た葵咲は、優しく笑いかけた。
そして途切れ途切れに言葉を放つ。
葵咲「・・・・なんだか、疲れた…な。・・・眠く…なっ・・・て・・・きちゃった・・・。」
土方「!? ダメだ、寝るな!!!」
葵咲「・・・・ちょっと・・・だけ・・・・眠らせ…て・・・・・。」
そう言って葵咲は静かに瞼を閉じた。離れた場所から見ていた総悟だったが、それを目の当たりにしてフラフラと葵咲に近寄る。
総悟「き…さ・・ねぇ・・・・?」
近藤「おい…?」
銀時「!!・・・・おい…おい!?葵咲!?なぁ、悪い冗談はやめろよ、なぁ・・・・葵咲!!!」
山崎「葵咲ちゃん!目を開けてくれ!葵咲ちゃん!!」
総悟「葵咲姉ぇ!葵咲姉ぇェェェェェ!!!!!」
土方「目ェ開けろ!!おい!!・・・・っ!葵咲ァァァァァァァァァァ!!!!!」
しとしとと静かに降り注ぐ雨は大地を濡らす。彼らと共に空も泣いているかのように、静かに、ゆっくり、雨は降り続いていた。