第30章 人間大事なのは肩書きじゃなくて、中身。
高杉「コイツには生まれながらに攘夷の血が流れてんだよ。」
冷徹に告げられる高杉の言葉に、誰もが耳を疑う。
だが高杉の言葉を否定しない葵咲の態度を見て、それが事実なのだと悟った。
山崎「そんな…。」
「…へぇ。じゃあずっと俺達の事、騙してたってわけか。」
この場にはいるはずのない者の声が上がる。近藤、土方、山崎の三人は慌てて振り返った。
近藤「総悟!?お前…!!」
今回の件からは外されたはずの一番隊隊長、沖田総悟。来るなと言われたものの、やはり気になって一人遅れてこの場へと駆けつけたのだ。
総悟の右手にはバズーカーが握られている。総悟は大江戸第一ビルの入口をバズーカーで突破し、そのまま階段を上がってきたようだ。勿論、ビル内にも大人数の攘夷志士がいた。それを全て総悟一人で、しかもバズーカーを抱えたまま素早く斬り倒して駆けつけたのだから総悟の実力は相当なものである事が窺える。
総悟「素性隠して、真選組に潜り込んで…姉上の代わりを演じてたってわけか…。」
近藤「総悟!違う、葵咲は…!」
今この場に駆けつけた総悟は、葵咲が報告書を差し替えて仲間の危機を遠ざけようとした事、銀時と芝居を打って山崎を助けた事、一人で高杉を討とうとしている事等、真選組を護ろうと陰で動いていた経緯を知らない。近藤は慌てて総悟を説得しようとした。だが、近藤が言葉を発する前に葵咲が口を挟んだ。
葵咲「…そうだよ。最初から騙すつもりであの場所にいたんだよ。この計画を実行する為にね…。」
総悟「!」
土方「おい!おま…」
何を言い出すんだ、そう言葉を紡ごうとした土方だったが、葵咲は更にそれを遮るように言葉を続ける。
葵咲「でも計画は大きく失敗。だから今から逃げるトコ。どう?動けないでしょう?いくら騙されてたとは言え、数ヶ月一緒に過ごした私が人質に取られてる…。お人好しな貴方達は見殺しになんて出来ないよね?貴方達が一歩でも動こうものなら、この人が私を斬るよ。」
高杉「・・・・・。」