第3章 男の下心には気を付けろ。
場所は変わって恒道館道場。
新八の実家、志村家の客間。銀時と葵咲が並んで座り、向かい側に道場の持ち主、志村妙とその弟である新八が座る。お誕生日席の位置に神楽が座った。
銀時「っつーわけで、暫くコイツここに置いてやってくんね?」
事の一部始終を聞いた妙は、憐れむような表情で右手を口元に沿え、返答した。
妙「それは大変だったわね…。いいわ、とりあえずうちにいらっしゃい。お部屋は余ってるから家賃は結構よ。」
優しい言葉に葵咲は手放しで喜ぶ。
葵咲「本当にいいんですか?有難うございます!!」
妙はいつもの営業スマイルになり、葵咲に問いかける。
妙「でも、期間はどのくらいなの?いつまで居座るつもりかしら?」
その質問を聞いて、銀時がフォローするようにすかさず割って入った。
銀時「オイ。そういう言い方やめてやってくんない?コイツ天然だから。マジで受け取るタイプだから。考え込んで凹むタイプだから。」
今日初めて出逢ったと思っていた葵咲に対し、まるで以前から知り合いだったような銀時の口ぶりに少し疑問を感じた新八だったが、ここでは特に何もツッコまずに様子を見ることにした。
葵咲「えっと…はっきりしてないので・・・・やっぱりご迷惑ですよね…。」
葵咲は銀時の言ったとおり、深く落ち込んで下を向く。まるで客間全体の空気がほとんど全て二酸化炭素に変わったぐらい息苦しい雰囲気だ。
銀時「ほれみろ。」
妙「・・・・・。」
今までにないタイプのキャラクターに、どう対処して良いか分からず黙ってしまう妙。部屋に暫しの重い沈黙が降りた。その沈黙を破ったのは銀時だった。
銀時「とりあえず住み込みで働けるトコ俺らで探すから。それまでコイツのこと頼むわ。」
妙「分かったわ。」
それ以上はボケもツッコミもせず、妙は銀時の要求を受け入れた。先程のやり取りから不安になった葵咲は妙に問いかける。
葵咲「あの、いいんですか?」
妙「困った時はお互い様ですもの。」
妙も(多分)根は悪い女ではない。困っている葵咲を無償で受け入れることにした。
葵咲「すみません、有難うございます。」
その優しさに感謝し、葵咲は深々と頭を下げた。