第29章 身近な人であるからこそ、知られたくない事もある。
謎の男「フフッ。あ~あ、降参っ!こうさ~~~ん。」
銀時「…は!?」
男は握っていた刀を手放し、両手を耳の傍まで上げる。これには銀時も目を丸くするしかない。
男はゆっくりと立ち上がり、着物についた土埃等を払いながら言った。
謎の男「俺、元々武闘派じゃないんだよ~。だからここらで引くわ。まだ死にたくないし~。捕まるのもごめんだしね。」
銀時「お前っ…。」
一度立ち上がった男だが、傍に放った刀を拾うためにもう一度腰を曲げて刀を拾い上げる。
一瞬、不意打ちでもつかれるかと構えた銀時だったが、男はそのまま刀を腰の鞘へとしまった。
謎の男「適当に遊んで足止めするだけのつもりだったから、当初の目的は果たせてんだよ。」
ヘラヘラと笑いながら言う男に対して、意義を申し立てたのはその場に残っていた攘夷志士だ。
「ちょ!何言ってんですか!!」
謎の男「ああ、お前らは戦いたかったらそのまま戦ってていいよ~。」
「えぇっ!?ちょ!!」
何たる無責任な言動と行動。その場にいる攘夷志士達はあたふたとするしかなかった。
そして男は右手をヒラヒラとさせながらエントランスの入口へと向かって歩き出す。
謎の男「じゃあね~、白夜叉サーン。」
銀時「あっ!おい!!」
ビルから出ようとしていた男だが、入口の前でふと立ち止まる。そして銀時の方へと振り返った。
謎の男「ああ、真選組だけ先に行かせた理由、教えてあげよっか~?…晋助は多分、あいつらにあの女の秘密をバラすだろうからさァ。」
銀時「!?」
謎の男「アンタがその場にいたら絶対邪魔すんだろ?邪魔されちゃあ、面白くないからねェ~。だから足止めさせて貰ったんだよ♡」
銀時を指差しながら、男は不敵に笑う。
一気に焦りが生じる銀時。追い討ちをかけるように男は言った。
謎の男「どうしたの~?ホラ、早く行かないとホントに間に合わなくなっちゃうよォ~?」