第29章 身近な人であるからこそ、知られたくない事もある。
時刻は同時刻、歌舞伎町ビルのエントランスホールでは凄まじい戦闘が繰り広げられていた。
雑魚とも言える攘夷志士の下っ端達は、神楽と新八が半数以上片付けたが、それでも数多くの攘夷志士達が残っている。
銀時はというと、謎の男一人で手一杯の様子だった。こちらはサシの勝負をしており、周りの攘夷志士達もそれを心得ていたのか、背後からの不意打ち等は行なわなかった。もしかしたら事前に男がそういう指示を出していたのかもしれない。
銀時はこの男の“戦い方”に苦労させられている様子だった。
(銀時:くそっ!なんだ、こいつ…俺の攻撃を全部受け流しやがる…!)
仕掛けた攻撃が全て別の方向へと受け流されるのだ。どんなに全力で木刀を叩き込んでも、当たらなければ意味が無い。
時間は刻一刻と過ぎていく。銀時に焦りが生じていた。そんな焦燥を読むかのように男は戦いながら、そして嘲笑いながら銀時に話しかけた。
謎の男「この戦法、知ってる?誰の戦い方か。」
銀時「…っ!」
謎の男「俺さァ~葵咲ちゃんの大ファンなんだよね~。だから、闘い方も真似しちゃった♪」
そう、自らに向いた攻撃を受け流す戦法は葵咲の十八番だ。
銀時も以前の土方同様、この手のタイプと対峙することは無いに等しかった為、苦戦させられているのだ。
だが、余裕をかまして話し続ける男に一瞬の隙が出来た。銀時はそこを見逃さなかった。
銀時「お前…ちょっと喋りすぎなんじゃねーの?」
謎の男「っ!!」
男の隙をついて木刀を叩き込む銀時。その一撃は見事男の腹部へと命中し、男はそのまま壁へと叩きつけられる。
銀時「男の喋りはモテねーぞ。闘いに身が入ってなさすぎだ。」
“闘いに身が入ってない”、確かにそうだった。男は戦っていながらも心ここにあらず、といった様子だった。そして自分からは攻撃を仕掛けなかったのだ。
戦いにおいて腑に落ちない点が多い。だが、だからといって容赦するわけにはいかない。壁に打ち付けられ、その場に座り込む男の傍に歩み寄った銀時は、男に木刀を向けた。
銀時「これでしめーだ。」
木刀を向けられた男は不気味に笑う。そして…