第29章 身近な人であるからこそ、知られたくない事もある。
少しの沈黙。新八の沈む表情を見て、銀時はフッと笑った。
銀時「あいつらなら…、あいつらなら大丈夫だろ。それに、まだ“そうなる”と決まったわけじゃねぇ。それより、早いトコこいつらをどうにかしようぜ。」
銀時の言葉には不思議な力がある。無理だと思えた事も絶対に大丈夫になる、そんな魔法のような力だ。
銀時の言葉を聞いた新八は笑顔を返す。
そして三人が攘夷志士達を迎え撃つ為に構えた瞬間、黒い人影が攘夷志士達の間をすり抜け、銀時に向かって飛び込んできた。
「そうそう、俺が足止めしたかったのはアンタなんだよ、白夜叉ァ。」
銀時「くっ!」
瞬発的に相手の攻撃を木刀で防いだ銀時だが、そのまま壁へと追い詰められた。
新八「銀さん!」
神楽「銀ちゃん!」
銀時「てめーがここの連中の大将ってわけか。」
歌舞伎町ビルにて待ち構えていた攘夷志士達、彼らを指揮しているのは黒い着物、ところどころ破れたデザインのロックテイスト。黒髪に金メッシュ、多数のピアスを開けた長身の男。そう、何度か葵咲の前に姿を現した謎の男である。
男は一度後ろに飛び下がった。銀時は体制をたて直し、木刀を構える。
謎の男「アッハハハ。こうも思い通りに動いてくれると怖くなるよねぇ、自分の才能がさ。」
銀時「あぁ?」
ケラケラと嘲笑う男に、苛立つように眉間にしわを寄せる銀時。男は不敵な笑みを浮かべながらお喋りを続ける。
謎の男「アンタ達が盾になって、あの三人を先に行かせる事は想定内だったってコトさ。…いや、思惑通り、かな。」
銀時「なんだと?」
自分達が相手の手のひらで踊らされている。それは葵咲や真選組の危険を意味するのではないか?
銀時に少し焦りが生じた。
謎の男「白夜叉ァ、俺はアンタに感謝して欲しいくらいなんだけど。もしアンタがあいつらと一緒に行って、晋助が親しげにアンタの名前口にしちゃったらどうすんの?顔見知りだってバレちゃうよ?」