第29章 身近な人であるからこそ、知られたくない事もある。
『三人で十分。』、そう言って近藤、土方、山崎の前に歩み出る万事屋の三人。彼らの背中を見つめながら近藤が言葉を漏らす。
近藤「お前ら…。」
神楽「ここは私達に任せて、先に行くとイイネ。」
新八「葵咲さんを止められるのは、同じ真選組である貴方達だけです。行って下さい、近藤さん、土方さん。」
山崎「え?俺は?俺の存在忘れてない?」
自分の名前が並ばない事に、すかさずツッコミを入れる山崎。
新八「さぁ!早く!!」
近藤「有難う、新八君!」
土方「悪ぃ!」
万事屋の心遣いを受け取り、近藤と土方は走り出す。
山崎「お前らも無視すんなァァァ!お前らどんだけ俺の存在消したいんだよ!!」
走り出した近藤達と万事屋三人の両方に目を向けながら、山崎は叫んだ。
万事屋で療養中の時から何かと存在を消されそうになっている山崎。悲痛な叫びがエントランス内に響く。
そして神楽が深いため息をついた。
神楽「じゃあ仕方ないからジミーも行っていいヨ。」
山崎「仕方ないってなんだよ!俺も真選組ィィィ!!言われなくても行かせてもらうよ!!」
涙目になりながら山崎はその場を後にした。
真選組が攘夷志士達を切り抜け、階段を上り始めた事を確認した新八は静かに口を開く。
新八「銀さんも行って下さい。」
銀時「あぁ?何言ってんだ、お前。この量じゃ…。」
新八「今、葵咲さんを救えるのは真選組と銀さんです。いや、もしかしたら銀さんだけかもしれない。」
銀時「・・・・・。」
意味深な新八の言葉。その言葉の意味を銀時はかみ締めるようにただただ押し黙る。
新八「もし彼らが…。」
次に出てくる言葉を、新八は飲み込んでしまう。まるで、その先の言葉は禁句であるかのように。