第28章 笑顔の裏には苦悩がある。
銀時「どうしても奴の所へ行かなきゃならねぇのか?」
葵咲「…皆には知られたくない…事があるので。知られちゃったら、どの道今のままではいられません。」
銀時「・・・・・。」
俯き、視線を落とす葵咲を銀時は静かに見つめた。
そしてもう一つの疑問をぶつける。
銀時「ジミーに傷を負わせる必要はあんのか?」
銀時の質問に対し、葵咲は自らの刀、雪月花を膝の上に置いて言った。
葵咲「退君が無傷だと高杉に怪しまれる可能性があるでしょう。この刀には即効性の睡眠薬を塗っておきます。傷口から染み込むように、長時間目の覚めないものを。今屯所内で高杉が暴動を起こす場所や日時を知っているのは私と退君だけなんです。退君の出した報告書は土方さんが目を通す前に差し替えましたから。だから、事が済むまで退君には療養しながら眠っていてもらうつもりです。」
銀時「事が済むまでって…お前、まさか一人で奴とやりあうつもりか!?お前一人でどうにかなる相手じゃねーだろ!!」
葵咲「それでも!…それでも、行かなきゃ。私には行かなきゃいけない理由があるんです…。」
銀時「お前…!!」
葵咲の覚悟を聞いた銀時は嫌な予感が過ぎる。勢いで再び立ち上がった銀時を前に、葵咲は微笑んで見せた。
葵咲「大丈夫ですよ、心配しないで下さい。元の放浪生活に戻るだけですから。」
向けられた笑顔は心の底からの笑顔ではない。それは銀時の胸に突き刺さるように伝わってきたのだった。