第28章 笑顔の裏には苦悩がある。
一昨日の夕方の話。葵咲は万事屋へと訪れていた。
勿論この時も山崎が尾行についていたが、流石に万事屋の中まで入る事は出来ず、万事屋の外から様子を伺っていた。
葵咲が万事屋を訪れたのはイレギュラーな行動。万事屋内に盗聴器等を仕掛けているはずもない。
山崎はただ、外で葵咲が出てくるのを待つしかなかった。
まぁ、この時の山崎は土方に言われて渋々尾行していただけであり、この時も万事屋にフラリと遊びに行ったのだろう、程度にしか考えていなかったのだが。
葵咲「ごめんくださーい。」
銀時「お。珍しいな。どうした?悪ィ、今神楽と新八は出てんだよ。俺一人だけどいいか?」
葵咲は頷き、部屋の中へと案内された。
葵咲はソファに座って早々、深刻な顔をして話し始める。
葵咲「すみません急に。依頼したい事があるんです。」
銀時「…ただ事じゃねぇって面だな。何か、あったのか?」
自分から口火を切ったものの、話す事を躊躇っている様子の葵咲。
沈黙が落ちている間、銀時は話を急かす事も、聞く気をなくす事もなく、ただじっと葵咲が話すのを待っていた。
やがて、葵咲は顔を上げて口を開く。
葵咲「高杉晋助を…ご存知ですか?」
銀時「! 高杉ってお前…あの?」
知らないはずがない。攘夷戦争時代共に背中を預けて戦った仲間。いや、仲間だった者の名を。
葵咲「…はい。攘夷志士の高杉です。高杉は近々、真選組とやり合うつもりみたいです。それで…私に一緒に来いと、協力しろと言ってきました。」
銀時「なんでお前が協力しなきゃなんねーんだよ。放っときゃいいだろ。」
銀時は自分で入れてきたお茶をすすりながら、バカらしいと言わんばかりに話を終わらせようとする。
葵咲「…駄目なんです。私の今居る場所は…本当の居場所じゃないから。」
銀時「・・・・・。」