第28章 笑顔の裏には苦悩がある。
真選組を率いてきたのは近藤。土方は用事を済ませてから駆けつけるとの事で、まだこの場には来ていない。
土方、沖田、山崎の不在は近藤にとっては心許ないものだった。しかも相手は過激攘夷派の高杉に加え、仲間と信じる葵咲である。精神的に不安定になるのも無理の無い話かもしれない。
近藤「くそっ!『心の乱れは刀の乱れ』、か…。こりゃ俺も総悟にとやかく言う資格はねぇな。」
その不安定な精神状態は、相手に一瞬の隙を与えた。
原田「局長!危ねぇ!!」
近藤の背後を攘夷志士が捕らえたのだ。その事に十番隊隊長の原田が気付いたが、近藤と距離が離れており、フォロー出来る位置ではなかった。
「近藤ォォォ!!死ねェェェェェ!!」
近藤「しまっ…!!」
だがその瞬間、攘夷浪志士の動きは止まり、その場へくずおれた。
銀時「おい。なんでテメーらがここにいやがる。」
近藤「万事屋!」
攘夷志士を後ろから攻撃して近藤の危機を救ったのは銀時だった。
銀時の姿を捉えた近藤だったが、特に驚く様子は見せなかった。むしろ銀時がこの場に来る事を予測していたかのようだ。
近藤「俺達はついさっき確かな筋からタレコミがあったんだよ。お前の方こそ、なんで大江戸第一ビル(ここ)にいる?…お前、知ってたんだな?」
銀時「何の話だ?」
近藤の問い掛けに、とぼけたように首をかしげる銀時。そんな銀時の首元に背後から刀を向ける人物がいた。
そう、土方である。土方は“用を済ませて”この場へと駆けつけたのだ。
土方「とぼけたって無駄だ。俺がガキどもに口を割らせたからな。」
動けば刀が首に刺さる。そんな状態だった為、銀時は横目でちらりと後ろに目をやった。土方の後ろには神楽と新八がいた。
神楽「銀ちゃん…。」
新八「すみません、僕ら…。」
新八が全てを言い終わる前に、銀時がため息をついた。