第28章 笑顔の裏には苦悩がある。
場所は変わって大江戸第一ビル。
このビルは建設途中に建設会社が倒産し、その後の建設を放棄されたビルだ。大方出来上がってはいたものの、内装等は全く手が付けられておらず、窓もない。階によっては壁すらなかった。勿論、電気など通っているはずがない。吹きさらしになっていた為、ところどころかなり劣化していた。
雨という天候で太陽の差し込まない、そんな薄暗いビルの中で葵咲は高杉と共にいた。
葵咲「これからどうするの?」
高杉「そう焦るな。まずは奴らを潰してからだ。そろそろだろう、ここに来るのは。」
葵咲「・・・・・。」
本来なら、葵咲が真選組を煽ってここへとおびき出している手筈だった。だが、葵咲が告げたのは“歌舞伎町ビル”。始動時間も偽っていた。真選組が今ここへ来るはずがない。
葵咲は何も言わずに高杉の顔を静かに見つめていた。それから数秒も経たないうちにビルの外が騒がしくなった。その音を聞いた高杉はビルの下を見下ろす。
高杉「ククッ。来やがったな。罠だと分かっていながら来るたぁなァ。」
ビルの外には真選組隊士達が押し寄せている。外で待ち構えていた高杉の部下である攘夷志士達と応戦していたのだった。
高杉の言葉を聞き、葵咲も慌てて外へと目を向ける。来るはずがないと思っていた真選組の姿を目にした葵咲は、冷や汗を垂らした。
(葵咲:どうしてここに!?確かに私は…。)
動揺を高杉に読み取られまいと、葵咲はその場から離れる。
高杉はそんな葵咲の背中を何も言わずにただじっと鋭い眼光で見つめていた。
高杉「・・・・・。」