第27章 仲間とは最後まで信じ抜く覚悟があるかどうか。
葵咲『大丈夫です。安心して下さい。私が、私が必ず…護りますから。』
消え行く意識の中で聞いた、その心強い言葉を覚えている。
優しい笑顔をはっきりと覚えている。鍛冶屋から出て行く“真選組に所属する”葵咲の背中を、今でも鮮明に覚えている。
やはり今までの葵咲が嘘だったとは思えない。自分達を騙す為の芝居だったとは到底思えない。
土方は心の中でそっと決意を固め、静かに立ち上がった。
近藤「トシ。」
土方「アンタのお陰でスッキリしたわ。」
近藤「フッ、そうか。」
先程までの迷いは晴れ、すっきりした表情の土方。それを見た近藤は安心したような顔つきで、その場を立ち去ろうとする土方の背中を見つめた。
だが、少し歩いたところで土方はふと立ち止まる。
土方「!!・・・・・。」
急に立ち止まる土方を見て、近藤は声をかけた。
近藤「? どうかしたのか?」
土方「なぁ近藤さん、高杉が暴れんのは本当に“歌舞伎町ビル”だったか?」
(土方:…何か引っ掛かる…。)
近藤「山崎が出した報告書には、そう書いてあったんだろ?」
山崎から直接報告を受けたのは土方だけ。直接話を聞いていない近藤は、聞いたままの曖昧な返答をした。
土方は顎に手を当て、考え込むように思いを巡らせた。そして… 何かに気付いたように顔を上げた。
土方「報告書…。山崎・・・・! …そうか!!」
近藤「え?トシ!?」
突然駆け出す土方に近藤は慌てて声を掛けるが、土方は脇目も振らずに自身の部屋へと戻っていった。
土方は自室に入り、机の引き出しをひっくり返した。そして見つけた一枚の紙切れを凝視しながら唸った。
土方「…やっぱりそうだ。」
近藤「おい、どうしたっていうんだよ。…トシ?」
突然駆け出した土方の様子が気になり、近藤は土方の後を追ってきたのだった。声を掛けられた土方は、手に持っていた紙をくしゃっと握り締めながら静かに告げる。
土方「悪ィ近藤さん。俺ァ明日朝一行かなきゃならねェ場所が出来た。」
近藤「それは別に構わんが…一体…。」
土方「俺もまだ確信じゃねぇがな。」
そうして夜は更けていく。先程までは綺麗に輝いていた月が、今では傘をかぶったように雲に覆われていた。