第27章 仲間とは最後まで信じ抜く覚悟があるかどうか。
だが次の瞬間、近藤から出てきた言葉は土方の想像していた言葉とは違っていた。
近藤「違う。あいつを…葵咲を“斬らない”覚悟だ。」
土方「!」
驚いた土方は、再び近藤の方へと向き直る。
近藤の表情は先程とは変わっておらず、真剣なままの眼差しだった。
近藤「俺は葵咲を信じている。同じ真選組の仲間としてだ。お前が葵咲を斬る為に迷いのあるまま出陣するってんなら、俺がそうはさせねぇ。」
土方「…近藤さん。」
土方はただ目を瞬かせた。そして今度は近藤の方が土方から視線を外し、何かを思い出すかのように目を細めて空を仰ぐ。
近藤「さっきあいつが屯所へと戻ってきた時、あいつと一度も目が合わなかった。」
土方「?」
近藤「あいつは嘘をつく時、他人と目を合わせねぇ。まぁ今回の場合は嘘をついてるっていうよりは重大な何かを隠している、そういったように思えたがな。」
土方「!」
近藤の見解に土方は静かに耳を傾ける。そして近藤は腕組みをし、更に続けた。
近藤「あいつの事だ。何か並々ならぬ事情があったんだろう。俺はそれを確かめる為に明日出陣する。あいつを連れ戻す為、救い出す為に出陣するんだ。」
土方「・・・・・。」
近藤の言葉を受け止め、土方は暫く考え込むように下を向く。
そして出逢ってから今までの葵咲の事を思い出した。天然で、何処か抜けているところがあって、でもいつも笑顔で真剣に仕事に取り組んでくれていた。周りの人間と真剣に向き合っていた。伊東の画策により、真選組が瓦解しそうになった時には…命を張ってくれた。
土方が村麻紗の呪いにより、ヘタレたオタクになった時の事だ。
その意識は乗っ取られたと思われた土方だったが、鉄子の鍛冶屋で刀を見てもらっていた際に、意識を取り戻した事があった。
だがそれも束の間の事、またオタクに意識を乗っ取られそうになり、その場へとしゃがみこんだ時、その様子を見ていた葵咲が真剣な眼差しで土方の肩に手を置いて掛けてくれた言葉を思い出す。