第27章 仲間とは最後まで信じ抜く覚悟があるかどうか。
山崎にとどめを刺そうと、葵咲は刀を振り上げる。
己の最後を予期し、硬く目を瞑る山崎。だが次の瞬間、身体に痛みが走る事はなかった。
葵咲「くっ!!」
葵咲の苦渋の声が聞こえると同時に、刀が地面に落ちる音がした。
恐る恐る山崎が目を開けると、痛そうに右手を押さえる葵咲の姿があった。
そしてその葵咲の視線の先に目をやると、そこには銀時がいた。
山崎「…!! 万事屋の旦那…!!」
どうやら寸でのところで銀時が持っていた木刀を投げ、葵咲の手に命中させたようだ。
葵咲の足元には先程振り上げられていた刀と銀時の木刀とが転がっていた。
銀時「どういう事ですかァ?これは。稽古にしちゃあ、ちょっとやりすぎなんじゃねぇの?」
葵咲「・・・・・。」
ただ事じゃないと察したのか、銀時はいつもの飄々とした表情ではなく、真剣な表情で葵咲に語りかけた。だが、真剣に言っても葵咲は何も答えない。その場に沈黙が下りた。
銀時「・・・・・。」
銀時と葵咲が睨み合っていると、地に蹲っていた山崎が力を振り絞るように声を上げる。
山崎「だ、旦那・・・彼女を…とめ…て・・・・。彼女は…高…杉と、繋がっ・・・・。」
銀時「!?」
その声を聞くや否や、葵咲は自らの刀を拾い上げて鞘にしまい、銀時がいる場所とは逆の方向へ、神社の裏口の方へと静かに歩き出した。
葵咲「…命拾いしたね。」
銀時は葵咲が立ち去るのを目で追いながらも、急いで山崎のもとへと駆け寄った。
銀時「おい!しっかりしろ!!」
山崎を抱き起こして声を掛ける銀時。だが山崎は虚ろな表情をしていた。
(山崎:…だめだ…意識が遠のいてく・・・・。)
そうして山崎が静かに目を瞑った時、銀時は山崎を抱えながら立ち去ろうとする葵咲にも声を掛けていた。
銀時「おい!待て!!」
葵咲「―――――。」
そこで山崎の意識は途切れた。