第27章 仲間とは最後まで信じ抜く覚悟があるかどうか。
蝶の舞う柄、紫色の着物、素足に草履。そして左目には包帯が巻かれている。月夜に映し出された姿は紛れもない、過激攘夷派の高杉晋助だった。
その姿を目にした山崎は開いた口が塞がらない。
(山崎:高杉!?なんで葵咲ちゃんがヤツと…!?)
何が何だか分からない。山崎が頭の中を整理出来ずにいる間も、二人の会話は進んでいく。
葵咲「彼らをおびき出す役を私がするってこと?」
高杉「ククッ、物分りが良いじゃねぇか。その為に真選組に潜り込んでくれてたんだろ?」
(山崎:!?)
葵咲「・・・・・。」
高杉の言葉に葵咲は肯定も否定もせず、ただ静かに視線を下に落とす。今まで見た事のない冷たい表情の葵咲。そんな葵咲の冷ややかな表情を見た山崎は、背筋をゾクリとさせた。
高杉「じゃあ頼んだぜ。…ああ、それから。そこに害虫がいるようなんだが。」
今まで山崎の方には目もくれなかった高杉だが、この時冷たい視線を山崎の隠れている茂みの方へと送った。
(山崎:ヤバイ!バレてる!!)
葵咲「いいよ、私が消しておくから。」
どうやら山崎の存在は最初から二人にはバレていたようだ。
次の瞬間、葵咲は持っていた刀を鞘から抜き出し、山崎の隠れていた茂みを切り裂く。山崎はなんとかギリギリのところで刃を交わし、茂みから転がり出た。
山崎「くっ!!」
体制を整えながら山崎は高杉の姿を探す。だが、そこにはもう高杉の姿はなく、冷たい表情を浮かべた葵咲だけが佇んでいた。
山崎は葵咲の前に立ちはだかる。
山崎「どういう事だよ!?葵咲ちゃん!!」
葵咲「今の話の通りだけど。全部聞いてたんでしょう?」
山崎「!?」
目の前にいる葵咲は、山崎の知っている葵咲ではなかった。少なくとも山崎の知る限りでは、こんな冷徹な表情をした事はない。
山崎は仕方なく自らも抜刀して葵咲の前で構える。だが動揺や迷いがあった為か、山崎は手の震えが止まらなかった。その震えをちらりと見やる葵咲はゆらりと柳のように静かに佇む。そして不敵な笑みを浮かべた。