第27章 仲間とは最後まで信じ抜く覚悟があるかどうか。
時刻は数時間前、葵咲が神社へ足を踏み入れた頃へと遡る。
神社の境内へと歩を進める葵咲。山崎は木の茂みへと身を隠しながらその様子を密かに窺っていた。
そして葵咲は本堂の前まで来たところで足を止める。
葵咲「・・・・・。約束どおり、来たよ。いるんでしょ?」
(山崎:誰かと待ち合わせしてるのか?こんな人気のない場所で…?)
誰もいないと思われる境内で声を張り上げる葵咲。山崎はそっと葵咲の様子を覗き見る。そしてその声を聞いた誰かが本堂の裏から姿を現した。
「よぉ。ホントに来てくれるたァ思ってなかったぜ。」
葵咲「よく言うよ。」
山崎は葵咲の待ち合わせ相手が誰なのか、目を凝らして見ようとするが暗くてよく見えずにいた。声のトーンからするに、相手は男のようだ。その声は妖艶な雰囲気を漂わせていた。
葵咲「で?私はどうすればいいの?」
「連れねぇなァ。いきなり本題かぃ?」
葵咲「・・・・・。」
相手の姿かたちは見えないが、どうやら煙草、もしくは煙管を吸っているようだ。暗闇に煙が立ち上る。
相手の男は葵咲に質問を投げかけたが、葵咲は答える気がないようだ。その事を悟った相手の男は、ゆっくりと話を続ける。
「まぁいいさ。話してェことは山程あるが…。今は明日の祭の事だけ話そうか。」
祭とは一体何の事なのだろうか、明日この辺りで祭なんかあっただろうかと山崎が疑問を抱きながら聞いていると、男は更に続けた。
「準備は整ってる。後は奴らをおびき出し、点火するだけだ。江戸は赤い海に包まれる…。ククッ。」
話の内容的に、楽しい祭でない事は明らかだ。嫌な胸騒ぎのする山崎は再度目を凝らし、相手の男の顔を確認しようとする。ちょうどその時、光を帯びてきた月が雲間から顔を覗かせ、男の顔を照らし出した。
(山崎:…あれは…!!)