第26章 平穏な日々は長くは続かない。
振り返った先、屯所の入口には柱にもたれかかるように銀時が立っていた。銀時の表情はいつもの飄々とした死んだ魚の目をしたものではない。目と眉の距離の縮まったシリアスな表情だった。
近藤「万事屋!?」
葵咲「!!」
その姿には誰もが驚いた表情を浮かべる。そして葵咲も一瞬驚いたような表情を見せたが、その表情はすぐに消え、次の瞬間にはとても冷たいものへと変わっていた。
葵咲「…もう来たの?早かったね。」
近藤「?? どういうことだ???」
近藤は全く状況が読めないといった様子で焦ったように銀時に説明を促す。銀時は近藤の方に一瞥をくれた後、再び視線を葵咲の方へと戻した。
銀時「騙されるな。コイツがジミーを斬ったんだよ。」
「!!!???」
その場にいる誰もが言葉を失う。少しの間重たい沈黙が流れたが、それを和ませようと近藤が声を上げた。だが動揺は隠せない様子で、その声は上ずっていた。
近藤「お、おいおい、万事屋~。悪い冗談はよせよ。何で葵咲が…。」
隊士達は近藤に合わせるように引きつった表情で乾いた笑いを上げる。だが土方だけは状況を把握した様子で、いつでも抜刀出来るようにと自らの刀に手を掛けて身構えていた。
土方「…なるほどな。嫌な勘が当たっちまったって事か…。」
総悟「・・・・・。」
土方の頬から一筋の汗が流れ落ちる。その場に腰を下ろしていた葵咲だったが、土方の声を聞くや否や、ゆらりと立ち上がった。
葵咲「ふふっ。バレちゃったらしょうがないかぁ。…そうだよ。私達が密談してるトコ見られちゃったから、ね。」
近藤「!? 葵咲・・・・・?」
葵咲は今まで見せた事のない、冷たい笑みを浮かべていた。