第25章 嵐の前の静けさ。
葵咲「そーちゃんの事だから、土方さんに嫉妬ばっかして今日何の日だか忘れてたんでしょ?」
総悟「・・・・・。」
葵咲の言葉には総悟も返す言葉がなかった。そう、この日は総悟の誕生日である。
葵咲の“大切な任務”とは、総悟の誕生日パーティの準備だったのだ。
店を貸し切り、店の人と協力して店内を飾り付けた。そして手作りのケーキの準備。それを葵咲を筆頭に、真選組隊士達全員で行っていたのだった。
土方にこの事を告げる事をすっかり忘れていた葵咲は、勿論役割分担にも土方を入れていなかった。その為、急遽総悟を迎えに行く役割を、土方が任されたのだった。
総悟が何も言えずに照れたように視線を逸らすと、葵咲はそれを覗き込みながら続けた。
葵咲「皆、ちゃんとそーちゃんの事見てるんだよ。」
総悟「葵咲姉ぇ…。皆・・・・・。」
集まった真選組隊士達は、ニシシと笑いながら総悟を見やる。総悟が笑みを零しながら鼻を指で掻くと、近藤が乾杯の音頭を取った。
近藤「よし!じゃあ今日は皆でぱーっと盛り上がるぞォォォ!!」
「カンパーーーーイ!!」
そうして総悟の誕生日パーティを兼ねた宴が始まった。むさ苦しい男達には不似合いのオシャレなカフェだが、料理が運ばれると皆は酒や料理に夢中になった。運ばれる料理は店のシェフが作ったパーティ用の特別メニューである。
そして葵咲が何かを思い出したように総悟に話しかける。
葵咲「あっ!あと、この間のお返事。」
総悟「?」
葵咲「私はそーちゃんか土方さんか、どっちが大切かなんて選べないよ。どっちの方がとか、そんなのない。そーちゃんも、土方さんも、私にとってどっちも大切な仲間だから。」
言った自分でさえ忘れていた台詞。それを葵咲は真剣に考え、答えを出してくれていたのだ。