第25章 嵐の前の静けさ。
葵咲「二人だけじゃない。近藤さんや退君、他の皆だって、私にとっては掛け替えのない存在になった。行き場のなかった私を拾ってくれて、こんなに良くしてくれて…誰が一番かなんて、決められないよ。」
総悟「葵咲姉ぇ。」
葵咲の答えは総悟の求めていたモノとは違っていたが、真剣なその回答に総悟は心温まるものを感じた。
そして次の瞬間、総悟は葵咲を強く抱きしめる。
葵咲「えっ、ちょ、そーちゃん!?」
それを目の当たりにした土方は、総悟を葵咲から離そうとする。
土方「あっ!てめぇ総悟!!こんな場所で何やって…!!」
だが、いつもとは違う総悟の雰囲気に、土方は言葉を途中で押しとどめた。
総悟「今日だけは、甘えてもいいですかぃ?弟甘やかすのも姉の役割、なんでしょ?」
葵咲「…うん。」
最初は驚いてしまった葵咲だが、この時ばかりは手のかかる弟のような総悟の我侭を受け入れる事にし、総悟の頭をそっと撫でた。
二人のそんな姿を見た土方は、仕事仲間の前でのそういった行動を不適切だと思いながらも、この日は総悟にとって特別な日だと思い、多めに見ることにした。
誕生日パーティで盛り上がるカフェ。そんな店から遠からず近からずの距離で、店の方を眺める黒い影があった。
「こんなところにいやがったとはなァ。真選組もとんだ荷物抱え込んだもんだ。クククッ。次はアイツを使うとするか…。」
言葉は闇に消え、そしてその人影もまた闇の中へと消えていった。