第25章 嵐の前の静けさ。
葵咲「それとコレ。」
総悟「…なんですかぃ、これは。」
総悟の目の前に出されたのは、宇宙怪獣ステファンの抱き枕だ。
葵咲「誕生日プレゼント!こないだのパトロールの時、お店の外から見てたでしょ?」
こないだのパトロール時、それはマヨネーズ枕を見つけ、土方と遭遇した時の事だ。
確かにそのマヨネーズ枕の隣に、ステファンの抱き枕も置いていた。だが正確には総悟はガラスに映った葵咲と自分の姿を見ていたのだが。葵咲はそんな事など知る由もない。
総悟「・・・・・。葵咲姉ぇ、絶妙に取り違えてるんですが。」
土方「…心中お察しするわ。」
なんとなく実情を悟った土方は、またもや静かに総悟を慰めた。
だが総悟は悲しむのでも、悔しがるのでもなく、とても温かい笑みを漏らした。
総悟「でも…たまにはこういうのも悪くないですかねぃ。」
次に土方が店の奥から予め隠していた紙袋を持ち出し、総悟の前へずいっと差し出す。
土方「ほら、受け取れ。」
見た事のある紙袋だ。そう、葵咲とのパトロール中に土方と出くわした時、土方が買っていた代物、マヨネーズボトル型枕だ。
本人は知り合いへの手土産と誤魔化していたが、実は総悟への誕生日プレゼントだったらしい。
総悟「なんですかぃ?…この、犬の餌枕は。俺ァ犬飼ってねぇんでこれは。」
土方「てめっ!いい加減にしろよ!これァ安眠効果抜群だ。」
総悟「毎晩うなされそうでさァ。」
口ではそう言いながらも、紙袋を受け取る総悟。
そして次に近藤が前へと進み出た。
近藤「俺からはこれだ。お前、稽古用の袴そろそろ買い換えた方がいいだろうと思ってな。」
総悟「近藤さん。」
総悟の稽古着の裾がボロボロになっていたのに気付いた近藤は、袴をプレゼントに選んだのだ。
近藤から袴を受け取り、今度は山崎と石田が総悟の前へと歩み出る。
山崎「俺達からはこれ!結構値の張る竹刀なんですよ。これで今度稽古つけてくださいね。」
総悟「山崎、石田…。」
山崎と石田が総悟の稽古から逃げ出したのはつい先日の事だ。
そんな出来事も一瞬で払拭するようなプレゼントに、総悟は思わずじーんとしてしまう。