第25章 嵐の前の静けさ。
先程の土方の口ぶりから、総悟はてっきり屯所へと連れ戻されるものだと思っていたが、気が付けば街中の方へと歩いてきていた。
総悟「ちょっと土方さん、何処行くんですかぃ?」
土方「いいから黙ってついてこい。」
総悟「?」
仕方なくそのまま土方についていく総悟。
そして土方はある店の前で立ち止まる。その店は、以前総悟と葵咲がパトロールをしていた際に見つけたオシャレなカフェだった。
土方は先に総悟に店に入るよう促す。総悟はわけが分からぬまま、とりあえず店の中へと足を踏み入れた。
店の中は明かり一つなく真っ暗だったが、自動ドアが開くと同時に多数のクラッカーが鳴り響いた。
総悟「!?…えっ?」
一瞬銃声かと思った総悟は身構えてしまったが、それがすぐさまクラッカーだと分かり、逆に往生してしまう。
すると暗闇の中から歌声が聞こえてきた。
「ハッピバースデートゥ~ユ~♪ハッピバースデートゥ~ユ~♪ハッピバースデーディア総悟~~~♪ハッピバースデートゥ~ユ~~~♪お誕生日、おめでとーーーう!!」
総悟「・・・・・。」
暗闇の中から、葵咲がろうそくのついたケーキを持って現れる。
このケーキはどうやら葵咲の手作りのようだ。以前葵咲が食堂で眠っていた時に土方が見たレシピ案に載っていたものである。
総悟が状況を掴めず棒立ちになっていると、パッと店内の電気が点いた。そして今度は店の奥から近藤が出てきた。
近藤「お前が出て行ってしまった時は一瞬ヒヤッとしたぞ。キャンセル料結構かかるんだからな!」
葵咲「ほら、そーちゃんここ一緒に来たいって言ってたでしょ?パーティにはもってこいだよね!」
確かに言った。だがそれは葵咲と二人でデートしたいという意味合いだ。
総悟「・・・・・。葵咲姉ぇ、絶妙に取り違えてるんですが。」
土方「…心中お察しするわ。」
総悟の心の内を読み取った土方は、静かに総悟を慰めた。