第25章 嵐の前の静けさ。
暫くその状態で目を瞑っていると、突如背後から声を掛けられた。
「おい。何やってんだ。」
声に反応して振り返ると、そこには煙草を咥えた土方が立っていた。
総悟「なっ!?なんでアンタがここに!!」
土方「つまらねぇ事してんじゃねーよ。今は仕事中だ。戻るぞ。」
迎えに来てくれる人物に、近藤や葵咲の姿を期待していただけに、総悟は現実の厳しさを実感する。よりによって今一番顔を合わせたくない人物が迎えに来るとは。
だがこれ以上この場で粘っても意味を成さないと思った総悟は、深いため息をつきながら仕方なく立ち上がった。
総悟「ケッ。…やっぱり葵咲姉ぇは他人って事ですか。」
土方「あん?」
総悟「姉上なら…こういう時はいつも一番に駆けつけてくれやした。」
土方「・・・・・。」
拗ねるように口を尖らせる総悟に、土方は沈黙を落とす。だが、総悟を納得させるように言葉を押し出した。
土方「…あいつは今、大事な任務中だ。」
総悟「俺なんかより任務ってわけですかぃ。」
土方「新婚夫婦の嫁みてぇな事言ってんじゃねーよ。」
なおも拗ねる総悟に、土方は仕方なく種明かしをした。
土方「・・・・・。もしその大事な『任務』がなけりゃこの場所に一番に駆けつけたのはあいつだ。」
総悟「…え?」
予想もしていなかった土方の言葉に、総悟は思わず立ち止まってしまう。土方は立ち止まらずに続けた。
土方「お前の行先に検討をつけたのはあいつだからな。」
総悟「!?」
土方「総悟は多分あの河川敷にいるから連れ戻してくれってよ。」
総悟「・・・・・。」
それ以上は土方も総悟も何も言葉にはせず、ただ歩いた。