第25章 嵐の前の静けさ。
翌日昼頃。土方は屯所内で総悟の姿を探していた。
土方「近藤さん、総悟の奴は?」
近藤「さぁ…今日は見てねぇなぁ。」
どうやらこの日も仕事をサボって何処かへ行ってしまったらしい。
土方は舌打ちして再び総悟の姿を探しに歩き出そうとする。すると不意に背後から刀が振り下ろされた。
総悟「土方ァァァァァ!!覚悟ォォォォォォォ!!」
土方「のわァァァァ!おい、オメー何やってんだ!」
間一髪のところで避ける土方。そのギリギリ具合はいつもと変わらない。
一時は驚いたものの、日常茶飯事なこの情景に土方は平静をすぐに取り戻し、煙草に火を点けながら総悟に言った。
土方「今朝のパトロールの仕事はどうした?つーかお前、ここんトコサボってばっかだろーが。いい加減に…。」
総悟「そんな事ァ関係ねぇ。今日こそ副長の座、譲ってもらいやすぜ。アンタがいる限り俺は一番にはなれねぇ。」
いつもなら何事もなかったかのように仕事に戻る総悟だが、この日はいつもと少し様子が違うようだ。総悟は真剣な眼差しで土方に刀を向ける。だが、そんな総悟を土方は真っ向から相手にはしなかった。
土方「…あのなぁ。そういう事はやることやってから言え。その後なら、いつでも相手してやる。」
頭をぼりぼりと掻きながら踵を返す土方に、総悟は歯噛みする。
総悟「…っ!なんだよ…。どいつもこいつも…俺の事ガキ扱いしやがって…。」
土方「あ?」
総悟「他人から認められて、優越感に浸って俺の事見下してんのか?」
総悟は土方に詰め寄り、胸倉を掴んだ。
近藤「おい、総悟!」
いつもの喧嘩とは違った緊迫した様子に、近藤は慌てて止めに入る。