第25章 嵐の前の静けさ。
近藤はどうしたものかと、また一つため息をつく。すると、近藤の部屋の襖が開いた。
葵咲「近藤さん。」
近藤「あぁ、葵咲か。」
葵咲は自室に近藤がいる事を知っていた為、お茶を運んできたのだった。襖の向こうで二人の会話を聞いていた葵咲は、困った顔で近藤に語りかけた。
葵咲「そーちゃんに手を焼いてるみたいだね。すみません、話聞くつもりじゃなかったんだけど、出るに出られなくて…。」
近藤「いや。別に構わんよ。…あいつは幼い頃から姉のミツバ殿と二人暮らしで、そのミツバ殿も亡くなってしまった…。今のあいつは一人だ。俺が家族のようになれたらと思うんだが…難しいな。」
思い悩むように視線を下にやる近藤。葵咲は近藤の横に持ってきたお茶をそっと置き、自らも傍に腰を下ろしながら近藤の肩にポンと手を置いた。
葵咲「大丈夫。そーちゃんは近藤さんのこと本当の家族みたいに思ってるよ。家族みたいに大好きだからこそ、嫉妬してるんだと思う。同じく近藤さんが大好きな、土方さんに。」
近藤「葵咲…。」
葵咲の温かい言葉に近藤は目を見張る。そして葵咲はなおも続ける。
葵咲「そーちゃんと土方さんは兄弟みたいな感じなんじゃないかな?近藤さんがお母さんで、大好きなお母さんを取り合う兄弟。」
近藤「えっ。俺、お母さん?せめてお父さんにして。」