第25章 嵐の前の静けさ。
翌日も総悟は仕事に励む気にはなれず、何気なく近藤の部屋へと訪れた。
近藤「どうした?総悟、浮かない顔して。」
いつもとは様子の違う総悟を目の前に、近藤は心配そうに尋ねる。
総悟「近藤さん…。」
近藤「なんだ、お前らしくない。悩みがあるなら言ってみろ。」
近藤に話を促され、自分の中のもやもやを話すべきか少し躊躇ったが、やがて口を開いた。
総悟「なんで土方さんはあんな勝手して許されてるんですかぃ?確かに局中法度は護っていやすが、それ以前に人として護らなきゃいけねぇとこが欠けてやがる。そんなヤローが本当に副長なんて座に収まってていいんですかぃ?」
近藤「…土足で人の部屋に踏みあがるお前の方が人として護らなきゃいけねぇとこが欠けてると思う。」
総悟は庭先から近藤の部屋へと訪れた為か、靴を履いたまま部屋へと上がりこんでいたのだった。
さり気なく注意を促した近藤だったのだが、総悟は聞く耳を持っていない。それだけ自分の中の靄(もや)が大きいという事なのだろうか。いつもの横柄な無視とはまた違っていた。
そして近藤はため息混じりに言葉を続ける。
近藤「それは違うぞ、総悟。あいつはあいつなりに他人の事を思っている。不器用な奴だからそれが他人からは認められにくいが、俺は知っている。あいつがどれ程仲間のことを思っているか。人として護らなきゃいけねぇ事もあいつなりにしっかり護ってるんだ。」
近藤のまっすぐな意見を聞いた総悟は、表情を暗くして俯く。
総悟「…近藤さんは、やっぱりヤローを庇うんですねぃ。」
ボソリと呟くような一言を残し、総悟はそのまま立ち去ってしまった。
近藤「あ、おい、総悟!」
立ち去る総悟を追いかけようか迷った近藤だが、虎鉄Z-Ⅱのコロコロ機能で自室を掃除していた為、出遅れてしまった。