第24章 他人は自分より優って見える。
土方「あん?オメーら仕事サボって何してやがんだ。」
店から出てきたのは土方だった。
葵咲「私達はヤクルト飲んでただけです!」
総悟「そりゃ葵咲姉ぇだけでしょ。俺の分までご丁寧に。」
葵咲と総悟の会話はおかまいなしに、土方は煙草に火を点けながら眉を寄せる。
土方「遊んでねぇで仕事しやがれ。」
総悟「そのセリフ、そのままバットで打ち返してやりますぜ。土方さんこそ、その手に持ってる物は何なんですかぃ?」
土方の手にはしっかりと店の紙袋が握られていた。紙袋の中にはマヨネーズボトル形の枕が入っている。枕は透明なビニールとリボンで包まれ、簡単なラッピングが施されていた。
土方「こっ、これは知り合いへの手土産だ。」
バツが悪そうな顔で土方は慌てて紙袋を隠すように、その手を後ろに回した。
総悟「へぇ。流石は土方さんの知り合いだ。犬の餌好き仲間ってわけですかぃ。」
土方「うるせー!」
そして今度は葵咲が土方に苦言を申す。
葵咲「副長、職務中の布教活動はダメですよ。」
土方「布教活動って何だよ。」
葵咲の言っている意味が分からず、土方は真顔でツッコむ。
葵咲「マヨネーズを讃える者は救われり~的な感じなんでしょ?その景品なんでしょ、ソレ。」
土方「んなわけあるかァァァ!!」
葵咲「でも副長、そんな宗教あったら入るんじゃないですか?」
葵咲の質問を真剣に考え、実際にあったら入るかもしれないという思いが頭を過ぎってしまった土方は、何とも言えない表情で沈黙を落とした。
土方「・・・・・。」
葵咲「あ、やっぱり。」
土方「ごちゃごちゃ言ってねぇで早く持ち場に戻れ!」
言い返すことの出来ない土方は、力技でねじ伏せようとした。そして土方はさっさと歩きだす。
葵咲「もういっそのこと副長が開祖になっちゃえばいいんじゃ?」
土方「やかましいわ!」
葵咲は土方の後を追いかけ、からかうように笑いながら土方の横を歩き出した。
(総悟:気にくわねぇ…。)
かつての土方とミツバに重なる二人の背中。その面影を見る総悟は手に拳を作り、その場に佇むのだった。