第24章 他人は自分より優って見える。
二人は街中の大通りを歩いていたのだが、葵咲はその道を戻るように走り、建物と建物の間の脇道の前で立ち止まった。
葵咲「・・・・・?」
葵咲のただ事ではない様子に、総悟も慌てて後を追ってきた。
総悟「どうかしたんですかぃ?」
葵咲「あ、いえ…。ごめんなさい、なんでもなかったみたい。」
(葵咲:視線を感じた気がしたけど…。気のせいだったのかな…。)
脇道の奥まで目を凝らしてみたが、そこに人影らしきものはなかった。
再びパトロールへ戻ろうと総悟に声を掛けようとした葵咲だったが、総悟がすぐ傍の店のショウウィンドウへと目を向けている事に気が付いた。
実際は、総悟はショウウィンドウの中の商品を見ていたのではなく、ガラスに映った自分と葵咲の姿を見ていたのだった。
葵咲「? 隊長、どうかしました?」
総悟「あ、いや…。」
流石に自分達の姿を見ていたとは言えず、言葉を濁す総悟。葵咲は総悟の視線の先を辿り、店内に飾られている商品に目を向けた。
葵咲「なにこれ、マヨネーズ枕だって。これ副長欲しがりそうじゃない?」
覗いたお店は雑貨屋さん。店頭に置かれていた商品はマヨネーズボトルの形をした枕だった。マヨネーズといえば容易に連想されるのは土方だろう。頭に浮かんだその連想を、葵咲は笑いながら総悟に語りかける。
だが、総悟は笑みを返すことはなく、むしろムッとした表情で言った。
総悟「…葵咲姉ぇは俺の事、どう思ってるんですかぃ?」
葵咲「え?」
同意を得られると思って言った言葉に対し、全く別の切り口から返されるその言葉に葵咲は戸惑った。
総悟「俺と土方さん、どっちが大事なんですかぃ?」
葵咲「そーちゃん?」
総悟の真剣な問いかけに、葵咲はますます戸惑う。総悟がどういう意味合いでその問いかけを投げているのか、どう答えるべきなのかと考えていると、店の自動ドアが開いた。